『さ、く…?』
声が震えていた。
まさか、そんなはずはない。
「嬉しい、覚えててくれたんだ」
『え…ホントに朔なの…?』
私には昔、幼馴染がいた。
その人の名前は、天羽 朔。
都会から遠く離れた田舎の小さな町で暮らしていた頃の、私の唯一無二の親友だった。
一緒に野山を駆け回って、くだらないことで笑い合っていた、かけがえのない存在。
それなのに──あれは、私たちが小学三年生になったばかりの春のことだった。
朔はある日突然、何の予兆もなく目の前から姿を消したのだ。
学校にも急に来なくなって、連絡も一切取れなくなって。
パニックになった私は慌てて朔の家まで走っていったけど、そこにはもう天羽家の痕跡すら残されていなかった。
引っ越しの挨拶も、手紙の一枚すらもなく。
まるで、最初からそんな男の子なんて存在していなかったかのように。
『朔、…何であの時何も言わずにいなくなったの?今まで一体どこに……』
溢れ出しそうな疑問を必死でぶつける私に、朔はどこか申し訳なさそうに困り眉を作ってみせた。
「…それは、ごめん。僕もあまりにも突然のことで、伝えるタイミングがなかったんだ」
目の前で話す男の子を凝視しながら、胸の奥で小さな違和感が渦巻く。
……この人、本当に私の知ってる朔なのかな……?
だって、昔は柔らかい栗色だった髪は派手な金髪に変わっていて、まとっている雰囲気もあの頃の優しくて大人しかった“幼馴染”とは程遠い。
それに……特徴的な瞳だけは、見間違えるはずがない。
向日葵みたいに鮮やかで明るい、トパーズのように透明感のある綺麗な黄色い瞳。
「でも、やっと会えた。僕、君の事をずっと探してたんだよ。家の事情がひと段落して、また君に会いに行こうと思ったら、くーちゃん引っ越しちゃってたからさ……」
「会いに来た」という言葉が、胸に強く響く。
……確かに、私も朔がいなくなってしばらくしてから、家の事情で別の街へと引っ越した。
当時の私はまだ幼くて、あの唐突で理不尽な別れを受け止めることができなくて。
だから心のどこかで、“きっと朔は私のことなんて忘れて、どこかで新しい友達と楽しくやってるんだ”と、自分に言い聞かせるように思い込んでいた。
「ねぇ、僕と一緒に来てよ」


