【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ



やっと、全ての違和感の正体が分かった気がした。

その赤い瞳は叶兎くんと同じ色で、彼らは吸血鬼。

そしてさっきまでの会話内容。


……あの二人は、きっと。

叶兎くんの、ご両親。


だから初対面なのにどこか見覚えがあって、叶兎くんの面影を感じたのだ。


私は好きな人の親に、好きな人の好きなところを、あんなにペラペラと…

……これ、だいぶ公開処刑じゃない!?


恥ずかしすぎて一気に顔が熱くなり、その場に崩れ落ちそうになった。

でも……とりあえず、変な悪口とか変なことを言わなくて本当に良かった……!



そうして赤くなった顔を誤魔化すように必死でテーブルの片付けをしていると、トントン、と背中を軽く叩かれた。


振り返ると、そこにいたのは高校生くらいの男の子で、いつの間にか隣の空席に腰かけている。


あ、新しいお客さんかな……?


急いで呼吸を整え、営業用の笑顔を作って声をかける。



『ご注文で──』

「ねぇ、くーちゃん」



“ご注文ですか?”

そう聞く前に、彼の言葉に遮られた。



『……え?』



固まる私を、その男の子は真っ直ぐに見つめ返し、懐かしむように優しく微笑んだ。


私を、“くーちゃん”と呼ぶ声。

その幼い頃の愛称で私を呼ぶ人物を、私は一人しか知らない。




「久しぶりだね。僕の事、覚えてる?」