「ちょ、彼氏超イケメンじゃん」
「これは勝ち目ないって…」
後ろにいた2人の男の子達が小声で呟くのが聞こえた。
うんうん、叶兎くん超イケメンだよね、わかる。
ってそうじゃなくて…!
「じゃあ、写真だけでも──」
「ダメだよ」
ピシャリと言い捨てた叶兎くんの絶対的な声音に完全に圧倒され、彼らは青ざめた顔で「し、失礼しましたー!?」と逃げ去っていった。
『ふぅ……ありがとう叶兎くん。私、ああいうの全然慣れてなくて助かっ……て、叶兎くん……?』
礼を言おうと顔を向けた瞬間、叶兎くんの腕がするりと動いた。
肩を抱いていた手が、腰に回り…そのままぎゅっと、後ろから抱きしめられる。
『ちょっ…!ここ廊下だよ…?!』
ここは多くの生徒や客が行き交う廊下のど真ん中だ。
通りすがりの人たちから丸見えだし、そもそも叶兎くんはただ立っているだけでも目立つ存在なのに!
周囲からの熱い視線とヒソヒソ声が刺さるように伝わってくるけど、叶兎くんはそんなこと全くお構いなしといった様子で、私を逃がすまいとさらに腕の力を強めてくる。
「やっぱコスプレさせなきゃよかった、可愛さがバレる」
私の肩口に顔を埋めながら、耳元で低く呟く叶兎くん。
もう……っ、叶兎くんてば…。
というか私は、最初からコスプレなんてするつもりなかったのにやれって言ったの叶兎くんだ。
完全に矛盾している。
でも、知らない人にさっきみたいに声をかけられるのは嫌だけど、叶兎くんに可愛いって思ってもらえるならコスプレも悪くないかも、って少しだけ思ってしまう自分もいる。
…好きな人には、1番可愛い自分を見て欲しいし。
……って、何だかんだ私も叶兎くんにベタ惚れだな……。


