『…私の部屋、906号室なんです!』
どうせまた信じてもらえないんだろうなー、と思いつつも必死で弁明した。
「906号室、そんな話は聞いてないが…。カードキーを見せてみろ」
言われてポケットからカードキーを取り出し、桐葉くんに差し出す。
…もしかして最初からこうすればよかったのでは?
カードキーには名前が印字されているしこれなら証拠になる。
「……確かに、これは本物だな。」
低く呟いた桐葉くんは、私の後ろに視線をやった。
「うわ、ホントだ…」
振り返れば、ソファーの後ろに春流くんが立っていた。
「あー…。ごめん、胡桃ちゃん。さっきいきなり…」
気まずそうに目を逸らした春流くん。
さっきまでの威圧感は嘘のように消えている。
『ちょっとびっくりしたけど…大丈夫』
突然あんな事になったのは驚いたけど…
でも、部屋にいきなり入り込んだのは私の方だし。
「お前は雑なんだよ。だからこうなる」
「雑じゃないし」
「雑だよ」
でも、春流くんは学校にいた時みたいな様子に戻っていて、少し安心した。
「で、こいつは不法侵入者じゃなかったみたいだが、どう思う?」
「最悪」
聞き覚えのある声に1人の姿が思い浮かんでゆっくりとそちらに視線をやると、壁に寄っかかって立っている赤羽くんがいた。
やっぱり。
予想は当たったけど、まったく嬉しくない。
最悪って…さっきもそれ言ってたよね??
どんだけ私のこと嫌なの?

