「似合ってるよ、その服」
不意に、桐葉くんの表情が柔らかく緩んだ。
眼鏡の奥の瞳が優しく細められ、ポン、と手が私の頭の上に軽く置かれる。
『あ、ありがとう…?』
あまりにも突然のことすぎて、私はそのまま数秒間、固まってしまった。
え、桐葉くんってこんな感じだっけ…?
「…っ悪い、今のは無意識だった。忘れてくれ。」
ハッと我に返ったように手を引っ込めた桐葉くんは、視線を横に向けたまま自分のメガネを軽く押した。
いや、そっちに照れられると困るんだけど…?!
どう返事をすればいいのか分からず、お互いに気まずい微妙な沈黙が流れてしまった、その時。
「ごめんお待たせー!ってあれ、2人ともどうかした?」
女の子たちの囲みをうまく抜け出してきた天音くんが、首をかしげながらこちらに合流してきた。
「何もない。それよりまだ仕事は山ほどあるんだ、次行くぞ」
「うわっいきなり掴まないでよ」
桐葉くんは天音くんの腕をガシッと掴むと、そのまま強引に歩き出そうとする。
「じゃ、文化祭楽しめよ」
「うちのクラスお化け屋敷やってるからあとで是非おいでー」
ぐいぐいと桐葉くんに引っ張られながら、天音くんはひらひらと手を振って去っていってしまった。
天音くんのクラスはお化け屋敷かー………高校3年生のお化け屋敷って、めちゃくちゃ怖いんだよな…
「…あの、すみません」
教室へ戻ろうと踵を返した矢先、背後から急に声をかけられた。


