「胡桃ちゃん。叶兎って胡桃ちゃんが思ってるよりかなり独占欲強いから気をつけなよー」
私の耳元に、隣から忍び寄ってきた春流くんがクスッと楽しそうに小声で囁いてきた。
“独占欲”という甘い響きの言葉に、跳ね上がった心臓がさらに大きく跳ねる。
すると次の瞬間、ガシッと私の肩が後ろから力強く引かれた。
「近い」
叶兎くんは低い声で春流くんを睨みつけながら、私と春流くんの間に割って入るようにして、私を自分の背中に隠した。
「ほらね、言った通りでしょ?」
“友達だからって、俺の彼女に気安く触るなよ”──そんな無言の圧力を全身から醸し出している叶兎くんをよそに、春流くんは「ははっ」と楽しそうに笑ってみせた。
「あと、胡桃に変な事吹き込むな」
「事実を言っただけだよ。ね、胡桃ちゃん!」
ね!
と言われても…!
前に叶兎くんの部屋でバッタリ会った時も思ったけど、こんな風に叶兎くんを自然体でいじったりからかったりできるのって、きっと学園中で春流くんくらいだと思うよ…。
私はこの前、熱の勢いに任せて叶兎くんをちょっとからかったら、返り討ちに遭ったばかりだ。
軽率に変なことを言うと、本当に私の心臓がもたない。
……でも、叶兎くんの態度を見ていると、やっぱり春流くんに対しては、他のメンバーよりもどこか対応が柔らかくて甘い気がする。
天音くんに対してはいつも警戒心丸出しでトゲトゲしているし、桐葉くんに関しては相手が生徒会長だろうが総長だろうが互いにズバズバと思ったことを言い合っているから、まるで厳格な先生とやんちゃな生徒のやり取りを見ているような気分になる。
ふふ……なんだかんだで、二人は本当に仲良しなんだなぁ……。
叶兎くんのマントの裾をぎゅっと握りしめながら、私は二人のやり取りを温かい気持ちで見つめていた。


