昨日の放課後、クラスで配役を決めていた時のこと。
叶兎くんが「胡桃がコスプレしないなら、俺も絶対にしない」と不機嫌そうに言い放ったのだ。
私は「無理!!」と全力で拒否したけど、クラスの女子たちは叶兎くんのコスプレ姿を何が何でも拝みたいわけで……。
結果として、クラス全員からの絶大な圧力に私が屈する形になってしまった。
あの時、私が拒否しかけた瞬間のクラスの女の子たちの冷ややかな目……めちゃくちゃ怖かったんだから!
……まぁ、私も叶兎くんのコスプレ姿には興味があったんだけどさ……。
なんて自業自得なことを考えていたら、向こうから無言のまま歩いてくる足音が聞こえた。
見上げると、いつの間にか叶兎くんが目の前に立っていて。
『……か、叶兎く──』
声をかけようとした瞬間、叶兎くんは自分が羽織っていた漆黒の大きなマントをバサリと脱ぎ捨てた。
「…これ着て」
『……?』
状況を理解できないでいる私をよそに、叶兎くんは脱いだマントをふわっと私の肩に羽織らせる。
『え、えっと……なんで……?』
突然の行動に目をパチクリさせて問いかけると、叶兎くんはさっき逸らした視線をまっすぐに私へ向けて、ぽつりと呟いた。
「可愛すぎるから。……他の奴に見せたくない…」
可愛っ……!?
………え、あ、そういう…?!
さっき目を逸らされて不安だった気持ちは、今この言葉で一気に溶けてしまった。
『あ…えっと……あ、ありがとう…?その、叶兎くんも、かっこいいよ』
周囲にはクラスメイトもいるので平然を装うけれど、心臓はバクバクしている。
前のように陰口や嫌がらせはなくなったものの、やはり応援してくれる目と緊張させる視線は同時に感じた。


