【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ





「氷とかアイスとか欲しかったら貰ってくるけど、欲しい?」


氷……。

相変わらず頭は熱いから氷は欲しいけど…。

今は、


『ここにいて…欲しい…』



私は布団から手を伸ばして、叶兎くんの服の裾をギュッと掴んだ。

普段のなら私こんなに素直になれない気がする。


「……分かった、ここにいるよ」

『うん……。ふふっ』

「何、いきなりニコニコして…」

『好きだなーって、思っただけ』


頭はまだぼんやりしてて、思ったことがそのまま口から出てしまう。

きっと顔も熱で火照っているだろうな、と思いながらも、止まらない。



「………ねぇ、胡桃って風邪ひくと甘えたになるタイプ…?」

『…んー、そうかも』



もうどうにでもなれー!という勢いで、普段の私からは想像できない言葉がどんどん出てくる。

今なら風邪を理由に何言っても許される気がする。風邪のせいだもん。



「…風邪治ったら、覚悟して」

『え?』

「煽られた分だけ血も貰うから」



叶兎くんは、とびきり極上のイケメンスマイルで恐ろしいことを言った。

怖い。この人怖い。

その笑顔が1番怖いです…!



『貧血にならない程度で…お願いしマス…』

「勿論、血だけじゃ終わらないからね?」



……しばらくは風邪ひいてたいかも〜…なんて、

多分私の心臓が持たない。

叶兎くん優しいけど、こういうところは容赦ないから…ほんと…毎日毎日心臓が…。



「胡桃、顔赤い」



さっきまでの叶兎くんの動揺はどこへやら、いつもの調子で楽しそうに言った。


やり返された。

見事にさっき私が言った言葉を、返された。

私、叶兎くんにはまだまだ敵わないみたいだ。



『ムカつくっ…!』

「そりゃどうも」

『褒めてないっ!』

「はい、熱が上がる前にさっさと寝て」



ポンポンと優しく頭を撫でられ、布団に潜り込んだ。

結局その後も、叶兎くんは私が完全に眠りにつくまで、ずっと横で手を握っていてくれた。



風邪で体は弱っているはずなのに、心はなぜか満たされている。


そこから数時間寝ていたみたいで、目を覚ました時には夜になっていた。