「氷とかアイスとか欲しかったら貰ってくるけど、欲しい?」
氷……。
相変わらず頭は熱いから氷は欲しいけど…。
今は、
『ここにいて…欲しい…』
私は布団から手を伸ばして、叶兎くんの服の裾をギュッと掴んだ。
普段のなら私こんなに素直になれない気がする。
「……分かった、ここにいるよ」
『うん……。ふふっ』
「何、いきなりニコニコして…」
『好きだなーって、思っただけ』
頭はまだぼんやりしてて、思ったことがそのまま口から出てしまう。
きっと顔も熱で火照っているだろうな、と思いながらも、止まらない。
「………ねぇ、胡桃って風邪ひくと甘えたになるタイプ…?」
『…んー、そうかも』
もうどうにでもなれー!という勢いで、普段の私からは想像できない言葉がどんどん出てくる。
今なら風邪を理由に何言っても許される気がする。風邪のせいだもん。
「…風邪治ったら、覚悟して」
『え?』
「煽られた分だけ血も貰うから」
叶兎くんは、とびきり極上のイケメンスマイルで恐ろしいことを言った。
怖い。この人怖い。
その笑顔が1番怖いです…!
『貧血にならない程度で…お願いしマス…』
「勿論、血だけじゃ終わらないからね?」
……しばらくは風邪ひいてたいかも〜…なんて、
多分私の心臓が持たない。
叶兎くん優しいけど、こういうところは容赦ないから…ほんと…毎日毎日心臓が…。
「胡桃、顔赤い」
さっきまでの叶兎くんの動揺はどこへやら、いつもの調子で楽しそうに言った。
やり返された。
見事にさっき私が言った言葉を、返された。
私、叶兎くんにはまだまだ敵わないみたいだ。
『ムカつくっ…!』
「そりゃどうも」
『褒めてないっ!』
「はい、熱が上がる前にさっさと寝て」
ポンポンと優しく頭を撫でられ、布団に潜り込んだ。
結局その後も、叶兎くんは私が完全に眠りにつくまで、ずっと横で手を握っていてくれた。
風邪で体は弱っているはずなのに、心はなぜか満たされている。
そこから数時間寝ていたみたいで、目を覚ました時には夜になっていた。


