はぁ…と息を切らしながら叶兎くんが保健室に飛び込んできた。
廊下での激しい足音からして、生徒会の仕事を切り上げてなりふり構わず走ってきたのだとひと目で分かる。
「生徒会の仕事ひと段落したからちょっと抜けてきた。……お前、胡桃に何もしてないだろうな?」
「してないよー。さっきまでぐっすり寝てたし。」
天音くんはひらひらと手を振ると、ジト目で見つめてくる叶兎くんの視線を飄々とかわしてみせた。
「じゃ、お邪魔だと思うから俺はこれで、胡桃ちゃんお大事にねー」
何食わぬ顔でそう言い残すと、天音くんは軽やかな足取りで保健室を出て行った。
何もされてはいないけど…されそうにはなった気がする…。
『……あの…叶兎くん、さっきはありがとう』
寝そべったままチラッと叶兎くんの方を向いて、ひとまずお礼を言った。
すると叶兎くんはさっきまで天音くんが座ってた椅子に腰を下ろして、またもやじとりとした視線を、今度は私に向ける。
「あのさぁ……今朝俺が言った事覚えてる?」
『…え、今朝?』
若干お怒りモードな叶兎くんの圧に気圧されながら、必死に記憶を巻き戻す。
けれど、熱でぼんやりした頭ではこれと言って思い当たる節がない。
何か怒らせるような重大な約束でもしたっけ……?


