【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ




叶兎くん、忙しいのにわざわざ来てくれたんだ。

あとでちゃんとお礼言わなきゃな……。


それに、天音くんも。

元々保健室にいたとはいえそばにいてくれたんだよね。


『そうだったんだ…天音くんも、ありがとう』

「いーよいーよ、胡桃っちは大事な仲間だからね」


大事な仲間、か。

さらりとそう言ってくれた天音くんの言葉が、私の心にじんと温かく染み渡っていく。


この学園に転校してきたばかりで不安でいっぱいだった私を、みんなはこうして当然のように受け入れてくれた。

今の私は本当に恵まれた環境にいるんだなと、胸が熱くなる。



「で、体調の方は?」

『体調…さっきよりはだいぶ良くなったと思う』

「そっか、それなら良かった。何か欲しい物とかして欲しい事あったら遠慮なく言ってね」

『なんか……』

「ん?」



同級生にこんなこと言うのも変かもしれないけど、天音くんと話しているとふと頭に浮かんだ。

もし私にお兄ちゃんがいたら、こんな感じなんだろうなって。

天音くんはきっと… 家でもすごく優しくて、頼りになる素敵なお兄ちゃんなんだと思う。


『何でもない!なんか…なんとなく、天音くんの弟さんと妹さんは、こんな素敵なお兄ちゃんがいて幸せなんだろうなって』

「……」


……あれ…?

返事がない。


私の言葉に、さっきまで軽快に喋っていた天音くんの返答がピタリと途絶えた。


ベッドに横たわっている私の角度からは、椅子に座る天音くんの表情が伺えない。

不自然すぎる静寂に一気に不安が押し寄せてきて、私はおずおずと声をかけた。



『ご、ごめん、気に障った…?』



──カタン。

と椅子から立ち上がる音がした。



「……………ね、胡桃」



普段の明るいトーンと違って低い声で、私を呼んだ

いつもと違って、呼び捨てで。