とりあえず2号棟の方まで歩いてきたけど、想像以上に倉庫は広かった。
空気が少しひんやりして、外よりも静かで物音が吸い込まれていく。

中に入ると、視界いっぱいに積み上げられたダンボールが壁のように連なり、そこに大小さまざまなテープや画用紙、木材やペンキまで揃っていた。文化祭に必要なものが全部ここに集まっているんだろう。

前いた学校とは大違いだ…


『えーっと、ダンボールとテープだっけ』


持てる程度にダンボールを重ねて側にあるテープ類を掴もうとしゃがんだ時、視界がふっと揺らいだ。

足に力が入らなくて、そのままバランスを崩して山のように積まれていたダンボールに思い切りぶつかってしまった。

ガサッ、と大きな音を立てて積み上げられた山が崩れていく。


『…うわ、やっちゃった』


頭はまだクラクラしているし、体がやけに重い。

今日の朝から少し体調が変な気はしていたけど、気のせいだと思っていた。どうやら気のせいではなかったらしい。


「大丈夫?」


床にしゃがみ込んでいると、横から誰かに声をかけられた。


顔を上げると、倉庫の入り口に立っていたのは飛鳥馬くんだった。

彼も一員だけど、こうやって二人きりで話すのは初めてかもしれない。


「廊下まですごい音聞こえたけど…」


そう言ってこちらに歩いてきた飛鳥馬くんの目が少しだけ心配そうに細められる。


『えっと…大丈夫!ちょっと体制崩しちゃっただけ!』


なんとか笑顔を作って、体調が良くないことを悟られないように立ち上がろうとしたけれど、またふらりと視界が揺れた。

体勢が崩れる前に、飛鳥馬くんが私の身体を支える。


「大丈夫じゃないよね?体調悪いなら保健室に…」