「………はぁ。度胸ある子だとは思ってたけどまさかここまでするなんてね。どうせ吸血が目的なんだろ、だからって部屋まで入って来んなよ。」
──吸血?
いや、言ってる意味が分からないんですけど…
「この時期の転校なんて馴染みにくいだろうから優しくしてあげるつもりだったけど、そっちがそう来るならやめるわ」
な、なんか怒ってる…?
…でも、怒っているというより冷たい線で境界を引かれたような声だった。視線が軽蔑に変わった瞬間、背筋にぞわりと寒気が走る。
「まぁ…胡桃ちゃんの血、美味しそうな匂いするし今回は特別に見逃してあげる」
ぐっと距離を詰められ、逃げるように下がると
──トン、と背中が壁にぶつかって逃げ場を失った。
横に抜けようとした瞬間、両腕で壁を塞がれる。
もう、一体何!?
私自分の部屋に来ただけなんですけど…!?
逃げ場のない状態で鋭い視線に縫いつけられ、身体が強張る。
春流くんの右手が伸びて、制服のリボンに触れた。
軽く引かれて結び目が緩んでいく。

