私が寮に帰る頃にはすっかり日が暮れていた。
玄関の扉を開けた瞬間、ふわりと鼻をくすぐるような香ばしい匂いが漂ってきて、思わず立ち止まる。
『うわ、良い匂い!なんの匂いだろう』
良い匂いがするキッチンに吸い寄せられるように部屋の奥に歩いていくと、テーブルの上に豪華な料理が並べられていて、White Lilyのみんなが揃って机を囲んでいた。
「おかえり、胡桃ちゃん」
『ただいま!これ、すご…誰が作ったの?』
春流くんが笑顔で迎えてくれる。
私は思わず息を弾ませながら、彼の隣に腰を下ろした。
「俺が作った」
その問いに答えたのは意外な人物で
『九条くん!?』
思わず二度見してしまった。
人は見かけによらないとはまさにこういうことを言うのだろう。
銀髪に鋭い目つき、ちょっと荒れた口調の彼が、料理が得意って…ギャップの塊では…?!
「いやー、秋斗の料理ってほんと美味いよな!」
「うんうん、普通にレストランに出せるレベル」
天音くんと飛鳥馬くんが目を輝かせながらそう言った。
そういえば、この寮に来たばかりのときも“料理は秋斗が担当してる”って聞いた気がするけど……レベルが違いすぎる。
見た目までおしゃれで、思わず写真を撮りたくなるくらい。
みんな私が帰って来るのを待っててくれたみたいで、その後一緒に晩御飯を食べた。

