その人は一歩近づいてきて、ずいっと顔を覗き込んできた。
銀髪がふわりと揺れて頬に触れそうになるほど距離が近い。
息を呑んで、反射的に一歩後ずさった。
「おい、あんまり近づくと叶兎に殺されるぞ」
桐葉くんがすぐさま肩を掴んで引き剥がしてくれたけど、“殺される”って、物騒すぎる言い方……!
「叶兎?……あぁそういうこと…なんっか叶兎みたいな匂いすんなって思ったけど、まさかあの叶兎が…」
な、何それ…!!?
さっき叶兎くんと一緒にいたから…?!
そんなのぱっと見でわかるもんなの…
「俺は九条秋斗。WhiteLillyのメンバーだから、よろしく」
『九条、秋斗…。朝宮胡桃です、よろしくお願いします!』
前に見たWhiteLillyのメンバー表に…確かに「九条秋斗」の名前があった。
みんなの仲間ならこの人もきっと良い人なんだろう。
「秋斗、ちょうど今叶兎が生徒会室にメンバーを呼んでくれてる。今から来れるか?」
「あぁ、分かっ──」
そう言いかけて、ブーッ、と九条くんのポケットから不意に携帯の振動音が響いた。
画面を覗き込み、一瞬だけ眉を顰める。
「……少し用事が出来た。終わったらすぐ行くから、先行っててくれ」
「分かった。胡桃、残りの予算案は俺が回収しに行くから教室戻っていいぞ。ありがとな」
『あ、うん!分かった。また後でね』
そう言って持っていたバインダーを桐葉くんに預けて、私は自分のクラスへ戻ることにした。

