総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ





「失礼します。予算案の回収に来ました」


不意に低い声が響いて、教室の空気がふっと引き締まった。

視線を向けるとそこには桐葉くん。バインダーを抱えて仕事中の顔をして立っていた。


「あ、予算なら胡桃が今計算してくれてるから少し待ってて!」


と心音ちゃんが言うと桐葉くんの視線が、すっと私に向く。


「へぇ、計算得意なんだな」

『まぁ、一応…?』


得意っちゃ得意だけど…理系の桐葉くんの凄まじい計算スピードには遠く及ばないのでそう言われても何か複雑だ。

数学の授業とってるけど私文系だし。


『はい、一応確認したから合ってるとは思う』

「ありがとう」


受け取った桐葉くんは無駄のない仕草で紙をバインダーに挟み、淡々とチェックを入れる。

…そういえば、生徒会として活動してるところは初めて見たかも。
いつもはWhite lilyとしてのみんなしか見れてなかったから。


「あ、そうだ。天音を見なかったか?」

『天音くん?…うーん、見てないかなぁ。何かあったの?』

「さっきから天音の姿が見当たらないんだ。ったく、あいつまたサボりか…」


桐葉くんは小さく息を吐いてこめかみを指で押さえた。

怒りというより、長年積もり積もった“呆れ”の色が強い。