「失礼します。予算案の回収に来ました」
不意に低い声が響いて、教室の空気がふっと引き締まった。
視線を向けるとそこには桐葉くん。バインダーを抱えて仕事中の顔をして立っていた。
「あ、予算なら胡桃が今計算してくれてるから少し待ってて!」
と心音ちゃんが言うと桐葉くんの視線が、すっと私に向く。
「へぇ、計算得意なんだな」
『まぁ、一応…?』
得意っちゃ得意だけど…理系の桐葉くんの凄まじい計算スピードには遠く及ばないのでそう言われても何か複雑だ。
数学の授業とってるけど私文系だし。
『はい、一応確認したから合ってるとは思う』
「ありがとう」
受け取った桐葉くんは無駄のない仕草で紙をバインダーに挟み、淡々とチェックを入れる。
…そういえば、生徒会として活動してるところは初めて見たかも。
いつもはWhite lilyとしてのみんなしか見れてなかったから。
「あ、そうだ。天音を見なかったか?」
『天音くん?…うーん、見てないかなぁ。何かあったの?』
「さっきから天音の姿が見当たらないんだ。ったく、あいつまたサボりか…」
桐葉くんは小さく息を吐いてこめかみを指で押さえた。
怒りというより、長年積もり積もった“呆れ”の色が強い。

