【完】総長は、甘くて危険な吸血鬼 Ⅰ




「胡桃」

『……っ、な、なに』



ただ名前を呼ばれただけなのに。


名前なんて、転校してきてから毎日呼ばれているはずなのに。

こんなにも甘く柔らかい声で呼ばれると、なんだか調子が狂ってしまう。



「俺のものになってよ」



その言葉を聞いた瞬間、強烈な既視感が頭を駆け抜けた。


デジャヴだ。

いたずらっぽくニッと笑みを浮かべる叶兎くん。


……ふん、いいでしょう。乗ってやろうじゃないか。



『…嫌ですけど』



ぷいっと横を向いたけど、頬が緩みすぎていて「絶対に嫌じゃない」というのがバレバレな顔をしていると思う。

だって……嫌なわけ、ないんだから。



「拒否権ないから」



数秒間、お互いに笑いを噛み殺していたけれど、なんだか可笑しくなってしまって二人同時に吹き出した。



『ふふっ、なんかこれデジャヴだね?』

「うん、この会話、前にしたね」



あの時は心からの言葉で嫌って言ったけど、今は…



「………胡桃、俺の“彼女”になってよ」



今なら、自信を持って応えられる。



『…うん。叶兎くんの彼女にしてください』







この日から、

“叶兎くんは私を守り、その代わりに私は血をあげる”──ただそれだけだった私達の関係が一歩動き出した。