「胡桃」
名前を呼ばれただけなのに、
名前なんていつも呼ばれてるはずなのに、
甘い声で呼ばれるとなんだか調子が狂う。
「俺のものになってよ」
…あ、このセリフ、どっかで聞いたことあるぞ
とてもデジャヴ。
そう言っていたずらな笑みを浮かべた叶兎くん。
よし、乗ってやろうじゃないか。
『…嫌ですけど』
多分私今めちゃくちゃ頬緩んでるから絶対どうみても嫌じゃないだろっていう顔してる。
全然、嫌じゃない。
「拒否権ないから」
数秒笑いを堪えたけど、なんだかおかしくて2人で同時に吹き出した。
『ふふっ、なんかこれデジャヴだね?』
「うん、この会話、前にしたね」
あの時は心からの言葉で嫌って言ったけど、今は…
「………胡桃、俺の“彼女”になってよ」
今なら、自信を持って応えられる。
『…うん。叶兎くんの彼女にしてください』
この日から、
“叶兎くんは私を守り、その代わりに私は血をあげる”
ただそれだけだった私達の関係が一歩動き出した。

