──最初から?!
な、なんで狸寝入りなんかしてるの
だって、これは、まずいよ。
とてもまずい。
付き合ってもない男女がベットの上で抱きしめ合ってるとか大問題だし私の心臓がもたない。
なんとかしてベットから降りようと身を捩るけど、逃げようとする私を捕まえるように簡単に組み敷かれてしまった。
「だめ、逃さないよ」
低く、かすかに笑うような声が耳元に落ちる。
顔を上げると赤い瞳が真っ直ぐに私を見下ろしていて、息が止まった。
『…っ、?』
そのまま叶兎くんの顔がゆっくりと近づいてきて、首筋に牙が触れるのを覚悟して目をぎゅっと閉じたけど、いつもの痛みは来なかった。
かわりに感じたのは、かすかな温もり。
噛みつくというよりもそっと触れる感覚。
優しく、壊れ物を扱うように触れるみたいに、首筋に小さなキスが降り注ぐ。
「好きだよ、胡桃」
耳元でそう言われて、既に私の心臓は爆発寸前で、
血が欲しいなら早く吸って解放してくれ!!と心の中で訴えていた。

