5月、まだ春の冷たさが名残のように漂う朝
私──朝宮 胡桃は重たいキャリーケースを引きながら、白くそびえる学園の門をくぐった。
ここは、白星学園、今日から私の通う場所だ。
と言っても、新入生ではない。
“高校3年生5月”
そんな半端な時期に制服へ袖を通す私は、転校生という存在だった。
胸元に結んだ赤いリボン、淡いピンクのチェックのスカート。
真新しい制服に包まれた身体で広大な敷地へ足を踏み入れる。
『えーっと、私の教室は…』
正門を通ったところで足を止めると、ブレザーのポケットから小さく折り畳まれた地図を取り出す。
地図が必要な程、この学園は敷地が広い。
「きゃー!WhiteLillyのみんな今日もかっこいい〜!」
…WhiteLilly?
教室の方に向かおうとした先に目の前に人だかりが出来ていて、見事に道を塞がれてしまった。
大勢の女子たちが取り囲むように集まっていて、
その中心にいるのは5名の男子生徒。
多分あれだ、
いわゆる少女漫画とかでよくある、人気男子達
で、大体ああいうのに関わるとろくなことがない。
転校生の私は尚更、できれば関わりたくないなぁ…とか考えながら、人だかりに近づかないように回り道する事にした。
…けどやっぱり、回り道なんかしなきゃ良かったと思った
だって、

