そんな様子を横から見つめていた紳士もまた、困ったように「ふうむ」と声を洩らして息を吐いたが、

「では……こうしないか、桃瀬くん? とりあえず今日の今日に公演復帰も無理だろうから、夕方まではお付き合い願いたい。その間にタマちゃんが誘拐に仕立てた理由を私が見つけよう。もし見つかったら……おそらく彼がOKした水曜日まで、君はここにいるべきだと思う。もちろん見つけられなかったら(いさぎよ)く、今夜中にサーカスへ送り届けることにするよ」

「はぁ……」

 何となく紳士のペースに乗せられた感はあるが、団長の行動は気になっていた。

 モモは一度全てを反芻(はんすう)してとうとうその条件を呑み、最後に念のための確認として、紳士が団長と知り合いであることを証明する『何か』の提示を求めた。