私に向ける声はとても優しいもので表情も優しく笑っていた。


「うわ。裕翔、切り替え早ぇー」


部屋を出る時、如月さんが裕翔くんを茶化していたけれど、裕翔くんはそんなのお構いなしに私を部屋から出した。


「あいつら、ああいうヤツらなんだけどさ。……その、めっちゃいいヤツらだから」


裕翔くんは恥ずかしそうに私に告げた。

さっきまではあの人たちに黒いオーラを見せて怒ってばかりだったのに、やっぱり心の底ではあの人たちのことをちゃんと大切に思ってるんだな……。


「うん。それは分かったよ。だってみんな裕翔くんを慕ってくれてるもん」


裕翔くんは驚いたような顔をしたけれど、ふっと優しく笑って私の手を取った。


「桜十葉、これからあの公園に行こうか」

「うんっ!」


黒堂高校から出る前も沢山の不良さん達が裕翔くんと私に挨拶をしてきた。

うぅ、……私にこの挨拶が慣れる日が来るのかなぁ。

私達は公園に入り、前に来た時と同じベンチに座った。裕翔くんが肩が当たる距離で座ったので、私の心臓がまたドキドキと鳴り始める。


「ひ、裕翔くんはここの公園に何か思い出があったりするの…?」


私は思いきって切り出す。裕翔くんは一瞬黙った後、ゆっくりと頷いた。


「俺、ここの公園で小さい時さ……一度だけ、一緒に遊んだ子がいたんだ」