ベッドには、気持ちよさそうに眠っている桜十葉。俺はその可愛い寝顔を思う存分堪能する。

あれから気がつくと時間が経っていて、今はもう夜の十一時頃。俺は肩肘をベッドについて、静かに寝息を立てる桜十葉をさっきから飽きることもなく見つめ続けていた。

毎日毎日、桜十葉と一緒のベッドで眠ってばかりの俺はちょっと、いやかなりイケナイ大人なんだと思う。

俺は桜十葉の事が、……好き。

それは、多分“昔”から。

桜十葉に隠していることは沢山ある。沢山の秘密をただ心の中に秘めているだけの俺を桜十葉は信用してくれている。

こうやって桜十葉に触れるたび、どんどん桜十葉の事が愛おしくなっていく自分がいる。蒼空さんとの約束を守らなければならないのに、長年の想いがそれを許してくれない。

出会いは、本当に突然だった。だけど、必然的だった。

小さい時の記憶の中にいた桜十葉が、雨の中1人で泣いていたんだ。

俺は桜十葉の肩を優しく抱き寄せて、今も温かな体温に触れ続けている。

俺は、本当に最低なヤツだ。

昔も今も、───俺は嘘を付き続ける。

それが、桜十葉の隣にいれる唯一の方法だったんだ。

だから、ごめん───。

これは俺の我儘で、俺の嘘にはまだ気づかないでいて欲しいんだ。

時が来るまでに、ちゃんと桜十葉から離れる覚悟をするから。だからもう少し、桜十葉の隣で幸せを感じていたい。