「俺、やっぱり桜十葉にこういうの着てみてほしくて……、買っちゃったんだけど」
「うん」
もしかしてまた私が怒るとでも思ったのかな?
裕翔くんが私のためを思ってお金を使ってくれたプレゼントに、怒るわけないのに。
「許してくれる……?」
「許すも何も別に怒ってないよ。凄く嬉しい」
裕翔くんが用意してくれていたドレスは、淡い水色のレースに薔薇の模様が描かれていた。
まるで、シンデレラみたいだ……。
「桜十葉はここで着替えてね。俺は向こうの部屋で着替えるから」
前にも聞いたような言葉に私は思わず笑ってしまう。そんな私に、裕翔くんも笑う。
「あの日のこと、思い出してる?」
「うん。こんなことで笑える未来が来るなんて、ちょっとだけ信じられないかも」
ホテルに入った時からどこか夢見心地で、これは本当に現実なのかと疑ってしまった。
「じゃあ、俺もすぐに着替えてくるから。桜十葉もゆっくり着替えてね」
「うん。本当にありがとう」
裕翔くんは自分のスーツを手にとって、部屋から出て行った。私は壁にかけられていたドレスを手に取り、机の上に置く。
来ていた服を脱いで、そのドレスを身に纏った。部屋の中にあった大きな鏡の前に立つ。
うわぁ……。本当に綺麗だ。