あいつ、明らかに俺の事怖がってたよな……。

桜十葉はまだ不思議そうな顔をしているけれど、俺はそのことにホッとする。

それと同時に、桜十葉が俺の知らない男と歩いてきたことに対して、今、すごく嫉妬している。

桜十葉に余裕のない男だと思われたくはないから、爽やかな顔をして嫉妬の嵐をどうにかして乗り切る。

でも俺の口はそんな好都合に動いてはくれなかった。


「あいつに呼ばれてんの?"おとちゃん"って。その呼び方なんかキモイね。悪い子にはおしおきが必要だよね?ほら、俺ん家に行こ」


澄ました顔をしているけど、本当は焦りでいっぱいだ。余裕なんてないし、他の男に取られるかもしれないという焦燥感が俺の心を充満する。

そう言って俺は桜十葉の手を掴んで、その小さな手を包み込む。桜十葉を見ると、すごく顔を真っ赤にさせていてとても可愛い。


「お、お仕置……?私、なんか悪いことしたかなぁ?」


おどおどとしている姿が可愛すぎる。桜十葉の一つひとつの動作が全部可愛いとか思う俺、結構重症なのかもしれない。


「そーだよ。甘〜いお仕置、ね?それよりさ、なんであの男と歩いてたの?てかあいつ誰?」


こんな事だけで焦る俺はもう本当に桜十葉の事が好きなのかもしれない。

いいや、本当はもうずっと前から───。


「あ、あのね!今日お友達になってくれた柊真陽くん!」