私はもう、完全にこの男の人に溺れてしまっているのだと改めて自覚した。

私は、裕翔くん以外の男の子にキュンとしたことなんて一度もない。裕翔くんとじゃなきゃ、私の胸はこんなにもときめくことはない。

……なんで、分かってくれないの。

私と裕翔くんは、やっぱり高校生と大学生で……。

その事実だけはどうしたって変えられなくて。

過去に出会っていたと思い出しても、その人の全部を知れたわけじゃない。


「私は、……裕翔くんとじゃなきゃこんなにドキドキ出来ないの……っ!私は、“男の子”が好きなんじゃない。“裕翔くん”だから、好きになったんだよ……っ」

「……っ!?ずるいよ、…桜十葉」


裕翔くんはとても驚いたような顔をして、私のことを見つめた。

今、ちゃんと私を見てくれた。

裕翔くんは、私を抱き上げたまま硬直して動かなかった。綺麗で整いすぎた顔に、透明な涙が流れ落ちる。裕翔くんはきっと、不安だったんだ。

私が他の男の子に目移りしてしまうのではないか、と。

それに今、気づいた。なんでもっと早く気づいてあげられなかったのかと自分を責めたくなる。


「裕翔くん、っ……不安にさせて、ごめんなさい」


私はそう言って、ぎゅっと裕翔くんの首に腕を回した。

私たちは、普通のカップルとは違う。普通の女子高校生と、ヤクザの組長の息子。