そして、私をふわっと持ち上げるようにしてお姫様抱っこをした。
「え、……っ!?裕翔くん、何して…」
「やっぱり、俺にこうされるのは嫌?そんなこと言うような悪い口は、ちゃんと黙らせておかないとね」
裕翔くんは、無表情でそう言って私を持ち上げたまま、唇を重ね合わせた。何度も何度も繰り返される深いキスに私はすぐにギブアップしてしまう。
「んっ…んん、……ふ、ぁ」
裕翔くんは私の唇を何度も塞ぎながら、家の玄関まで歩く。私にキスをする裕翔くんは、やっぱりいつもと違う。
今は何だか、とても不安そうな瞳で私を見つめながら、キスをすることを止めてくれない。
もう止めて、息が苦しい、といつもは言えるのに、今は何だかその言葉を言ってはいけない気がした。
裕翔くんの纏う雰囲気がそう言っている。
裕翔くんは器用に家の扉を開けて、家の中に入る。私はさっきまでよりも、もっと深く唇を重ねられて息をしようと口を開けた。
途端に絡まるお互いの舌。
「桜十葉、ちゃんと鼻で息しないと。すぐに苦しくなっちゃうよ」
裕翔くんは私を広すぎる玄関の白色の壁に押し付ける。今もなお抱っこされたままの状態で、裕翔くんの腰に足を絡めている格好なのでとても恥ずかしい。
執事やメイドさんたちはそんな私たちの様子を見て気まずそうに退散した。