一番正面には大きくて高そうなバイクが一台置かれていて、裕翔くんはそのバイクの上に私を座らせた。

裕翔くんが私の後ろに跨るようにしてバイクに乗った。

そしてハンドルを握り、それを力いっぱいに回した。

ブルルルルーンッ──────!!

バイクの爆音が間近で聞こえる。


「みんな、行くぞーーーー!!」


裕翔くんが大きな声で叫んだ途端、夜の静けさの中にバイクの爆音が響き渡った。

どんどん明かりが付いていき、イルミネーションのように輝く。前の方から明かりが付いていく光景が、まるで走馬灯のように見える。


「すごい、……っ!」


走馬灯なんて見たことないけど、私は思わずそう思ってしまう。


「ふふっ。桜十葉、俺の手をちゃんと握りしめといてね」


裕翔くんは優しい声でそう囁いて、バイクのエンジンを入れて、走り始めた。

真っ暗闇の街の中を、無数のバイクの光が埋め尽くしていく。それはすごく幻想的で泣きそうなくらいに綺麗だった。

黒のワンピースが冬の風になびく。後ろを振り向くと、裕翔くんの仲間たちが一斉にバイクに乗ってついてきている。

実は、さっき裕翔くんが寒いから、と私に温かいダウンジャケットを着せてくれたのだ。そのおかげで今は寒くもなんともない。