桜十葉は思ったよりも強気な女の子かもしれない。そう思った俺は思わず吹き出してしまう。そんな俺を見て、桜十葉が頬を膨らました。


『俺ん家、くる?』

『だ、大丈夫です…』


さすが、警戒心が強い。そう感心していると、ぐぅ~とどこからかお腹の音が鳴るのが聞こえた。

驚いて桜十葉を見ると、恥ずかしそうに真っ赤に頬を染めている。


『ふっ、お腹空いてんじゃん。ほら、俺ん家においで。慰めてあげるから』


その可愛さに、またも笑ってしまった。桜十葉はそんな俺の言葉に小さく頷いて、涙で濡れていた瞳を俺に向けた。


『ん、いい子』


俺は桜十葉に触れたくて、思わず頭を撫でる。


『そう言えば…名前、教えて貰ってもいいですか』


桜十葉が思い出したようにそう切り出した。


『ああ、うん。俺は坂口裕翔。君は?』

『私は、結城桜十葉と言います』


一か八か、フルネームを名乗った。少しだけ緊張した。坂口組の組長の息子だと、悟られてしまうかもしれないと思ったから。だけど桜十葉は気づいた様子はなくて、安心した。


『おとは、ね。よろしくね』


これから、桜十葉の隣でずっと笑っていたい。もう知っている君の名前を優しく呟いて、俺は幸せの中にどんどん溺れていく。


『お、お邪魔します…』