「桜十、葉……」


裕翔くんの瞳が限界にまで見開かれる。唇をわなわなと震わせて、必死に涙を堪えようとしている。


「私、言ったよね?もう覚悟出来てるって。私はもう、裕翔くんと一緒に堕ちる覚悟、出来てるの。だからちゃんと、受け止めてあげられる」


裕翔くんの頬に添えていた私の手を、裕翔くんの大きな手が包み込む。私が裕翔くんの涙を優しく親指で拭った後、裕翔くんは倒れるようにして床に座り込んだ。

私も一緒になって、大広間の冷たい床に座り込む。周りには沢山の人がいるのに、私たちはそれにお構いなしだ。

裕翔くんは瞳を伏せて眉を震わせた。


「みんな、少しだけ時間をくれないかな……。特攻を一時間、遅らせてほしい。相手にもそう伝えておいてくれない?」


裕翔くんが俯いていた顔を上げて、みんなの方を向く。

すると、近くで裕翔くんの話を聞いていた滉大さんと來翔さんが真剣な顔をして頷く。滉大さんは黒色の上質そうな特攻服。來翔さんは、背中に白鳥の絵がカラフルな色の糸で縫われた白色の特攻服。

二人とも、すごく似合っている。


「おら、お前らさっさと外に出ろ!!これは総長の命令だ!!!!」


さすが、副総長とでも言うべきか。その威力は凄まじい。特攻服を着た男の人たちは、動きを揃えて素早く退散していく。

滉大さん、すごいな……。