「それでも私は、明梨ちゃんのこと、ちゃんと思い出したい」


真っ直ぐな視線に、思わず射抜かれてしまいそうになった。心臓がギュッと掴みあげられるような感覚がして、思わず目を見開いた。


「桜十葉、……」


中学三年生の秋。終業式を終えて、私はいつも通り桜十葉と一緒に帰ったんだ。唯一の“親友”として。私と桜十葉は、本当にすごく仲が良かった。

でも、私は三学期から学校に来られなくなった。桜十葉にそのことを伝えることも出来なかった。

その理由は、私のお父さんが経営している大企業会社の跡取りの修行として、アメリカまで行っていたから。

三ヶ月間だけ。されど、三ヶ月間。

連絡も出来ずに突然学校に来なくなった私を、桜十葉がこんな短期間で忘れてしまうわけがないというのに…。

私は、条聖学院高等部の入学式で桜十葉を見つけた時、すぐに声をかけようと決めていた。でも、連絡もせずに突然消えた親友を、快く受け入れてくれるだろうかという不安が勝ってしまった。

私がそんな葛藤に駆られている時にはもう、桜十葉の周りには新しい友達がいた。桜十葉は誰にだって好かれる子だ。今私が話しかけたら、邪魔になってしまうかもしれない。

でも、話しかけないなんて出来なかった。桜十葉は私の唯一の大好きな親友だったから。