「私にはさ、桜十葉の気持ちを全て分かってあげることなんて出来ないんだけどさ。桜十葉が言ってることは、正しいと思うよ」
こんな暗い話をされたら、きっと朱鳥ちゃんに気を使わせてしまうと思っていた。でも、こんなにも真剣に話を聞いてくれた朱鳥ちゃん。もっと早くに、話していれば良かったな……。
***
朱鳥ちゃんとお昼を一緒に食べた後、私は急ぎ足で中庭に向かっていた。
教室から中庭までが遠すぎて困る。
でも、中庭に近づくに連れて私の心臓のドキドキはどんどん速くなっていく。ずっと、もう一度話したいと思っていた。だけどそれは、何の心の準備もないままに突然やって来たのだ。
「桜十葉、こっち」
広すぎる中庭でキョロキョロと辺りを見回していた私に、明梨ちゃんがここだよ、と手招きしてくれていた。
やばい、……やっぱり緊張してきた。
明梨ちゃんの座っているベンチに少し間を開けて座る。そうしたら明梨ちゃんは、すごく寂しそうな顔をした。
「久しぶり。桜十葉」
「うん。久しぶりだね」
明梨ちゃんは、入学式の日のように取り乱してはいなくて、逆に怖いくらいに落ち着いている。
今、心臓がすごくドキドキしている。
私のことを知っている明梨ちゃんと明梨ちゃんのことを全く知らない私。