そう言って明梨ちゃんは、教室を出て行った。

思ったより、淡白だったな…。

前に初めて話した時は、明梨ちゃんはもっと感情的だった。でも初めて話した、というのはどうやら私だけのようで……。

ずっと不思議に思っていたこと。実は、色々と考えていたんだ。

もし、明梨ちゃんという子と親友同士だったのだとしたら、なぜ私はそれを忘れてしまっているのか。

明梨ちゃんは幼少期からこの条聖学院に通っている、ということをクラスの人から聞いていたのだ。

それなら私は、少なくとも中等部時代からこの学院に通っているということになる。でも、私がこの条聖学院に入学したのは今年だし、この学院のことを知ったのも今年。

だから絶対に、私と明梨ちゃんが親友だったなんて、普通に考えればありえないことなのだ。

だけど、……。この胸につっかかる複雑な思いが、私の疑問に正解を与えてはくれない。


「桜十葉〜、一緒にお昼ごはん食べよっ」


明梨ちゃんのことを考えながら数学の教材を片付けていた私に、朱鳥ちゃんが話しかけに来た。


「うん!」


私達は二つの机をくっつけて、向き合うようにして座る。


「ねぇ桜十葉、さっき話してたのって倉本さんだよね?」

「えっ?そうなの?」