だって、そうするしかなかったから。だって、その事実を認めるにはあまりにも悲しすぎたから。そしてなにより、そうなることを早くから理解していたのは、他でもない俺自身だったから。
『ほらな。裕翔、今日からはお前がこの家の後継者だ。苦労、かけるな』
結局、兄貴はいつも自分のことだけだったのだ。血の繋がった本当の兄弟なら、兄は弟を守るのが普通ではないのか?そんな疑問に打ちひしがれる。
『おい!!!!貴様……!!反逆罪で死刑だぞ、お前はもう、私の息子などではない……!!!!』
父さんだって、裕希には多くの期待を寄せていた。でも、それが一人の男子高校生が背負うには、どうしたって、重すぎたのだ。
俺にだって、そんなことは分かっている。兄貴の一番の理解者は俺だ。俺だけが、兄貴の代わりになれるんだ。
『父さん、……もう、やめよう。次期組長の座は、俺が継ぐから』
俺がそう言ったら、父さんは複雑そうな顔で、唸った。やっぱり、父さんは俺よりも兄貴に、組長の座に着いて欲しかったのだな……。
小さい頃から、俺よりも兄貴への扱いが極端に丁寧だったのはそういう理由があったから。父さんも、母さんも俺に期待は寄せていないし、愛情さえも注いでくれない。
だからといって、俺は兄貴を恨んだことなんて、一度もなかった。なぜなら兄貴は、同じ血の流れる、唯一の理解者だから。