そして、その顔があまりにも悲しそうな表情をしていた事に、また息が止まりそうになった。


「俺の事、覚えて、ない……よね?」


月明かりが、彼の顔を照らしていた。

裕翔くんよりも薄い琥珀色のビー玉みたいな綺麗な瞳。すっきりとした鼻筋に、艶やかな唇。
とても、綺麗な人。

目の前にいる彼はとても危険なのに、裕翔くんの顔にそっくりな彼にドキドキしてしまった。


「やっと、見つけた」


そう言って、彼は私を優しく抱きしめた。

何も考えれなくて、ただ、驚きと動揺だけが心の中を支配する。

この人は、危険な人なんじゃないのか。

あの男たちが、私を連れ去ったんじゃないのか。


「あなたは、一体……」


裕翔くんに似た、綺麗な指が私の唇に触れる。


「その先は、言えないよ」

「あの、じゃああなたの名前は……」

「……裕希(ひろき)


彼が、……裕希さんがそう名乗った直後、───バァーン!!!という大きな音がこの暗い部屋に響いた。


「桜十葉っ、……!!!」


裕翔くんの声が必死に私の名前を叫んだ。

今までずっと、強ばっていた体から力が抜けていく。


「裕翔くんっ、……‼︎‼︎」


私も一生懸命に叫んで、裕翔くんに居場所を伝える。


「桜十葉っ、……‼︎」