「で、高校はどうなの?」

中学生ではちょっとだけ入りにくいようなオシャレなカフェで、俺と凛はデートをしていた。
凛はキャラメルマキアートをテーブルに置くと、弾けるような笑顔を見せてくれる。

「高校、すっごく楽しいの! 友達もできたし、今は部活をどうするかみんなで相談してるんだよね」

「良かった。でも、変な男もいるかもしれないし気を付けろよ」

「へ、変な男? みんな普通の男の子だけど……」

「凛は可愛いからな~」

俺の知らない彼女を高校のやつらが知っていると思うと、少し嫉妬してしまう。

「高校が楽しいのは嬉しいけど、俺のこと忘れんなよ」

「ちょ、忘れるはずないでしょ!」

嫉妬していることがバレたら恥ずかしいな、と今更思う。
冷静になろうとコーヒーを飲む。凛の前だからかっこつけたくてブラックにしたけど、ちょっと苦い。

「俺も、凛の高校目指そうかな」

凛が入学した高校は、この地域じゃレベルが高い方だ。俺の学力じゃ正直微妙かもしれない。

「ほんと!? 慎介くんがいいなら目指してくれたら嬉しいな。先生もいい人多いんだよ」

「でも、成績がなぁ……」

そう言うと、彼女は俺の近くに顔を寄せた。ひそひそ話だろうか。
そっと耳を傾ける。

「――それなら、勉強教えてあげる。今日、うちにくる?」

いたずらっぽく笑う彼女に、俺は動揺を隠しきれない。

「慎介くん、大好きだよ」

高校生になった彼女は、大人っぽく微笑んだ。