常盤くんは多分私を見つめている。
私は顔を上げられないまま……酷い女だよね。
しかし次の瞬間、強く抱きしめられた。
「……っ」
抵抗できなかった。
胸に顔を埋められて、心臓の音が伝わってくる。
私のじゃない、常盤くんの鼓動。
「最後だから」
耳元で、低く囁かれる。
思わず見上げると、そこには寂しそうに笑う常盤くんがいて。
胸がぎゅーっと締め付けられた。
ごめん、ごめんね……常盤くん。
「んな顔するな」
「あっ……」
首筋に唇が触れて、熱が残る。
止めなきゃいけないのに、体が動かない。
「……忘れんなよ」
え……?
そう言って、短いキスを落とした。
こんな優しいキス、忘れられるわけないよ……。
本当は離れたくない。
別れたくない。
それでも私は、何一つ本当の事を言えないまま、この人の手を振りほどかなければいけない。
「……今までありがとう」
私は再び目線を逸らしたまま、背を向けた。



