黒い龍は小さな華を溺愛する。


水族館で少しだけ言葉を交わした時と同じ、無表情に近い顔。

私たちに気付くと、ゆっくりと立ち上がった。


「……で、なに?」


挨拶もなく、淡々とした声。

紫藤くんがはぁとため息をつく。


「久しぶりに会ってその態度かよ」

「私も暇じゃないの」

「お前は昔っから夕晴以外興味ねぇもんな!」


常盤くんの名前を出されてドキッとした。

私が知らないところでの、三人の過去。

瑠亜の視線が私に向く。

その目に優しさはなかった。


「私に用があるのは、そっちなんでしょ?」


私は一度深く息を吸った。

逃げたら終わりだ、せっかく紫藤くんが呼んでくれたのに。


「……来てくれてありがとう。今日はお願いがあって」

「お願い?」


瑠亜がほんの少しだけ眉を動かした。


「私……近いうちに、常盤くんと別れる」


空気が一瞬で冷えた気がした。

はっきり言った瞬間、胸が締め付けられた。