黒い龍は小さな華を溺愛する。


この景色ももう見納め、なんだな……。

「聞いてんの?」

ぐっと手を引かれて、思わず足を止めた。

「ご、ごめん!」

「最近疲れてねぇ?腕もほら、前より細い」

そう言って、私の手首を掴んで見せてくる。

「そう、かな?ちゃんと食べてるよ」

「今日はうちに寄ってけよ、篠原さんも沙羅に会いたがってるし。飯も食ってけば?」

「あ……うん」

篠原さんに会うのも最後、になってしまうのかな。

切ない気持ちになるのを我慢して、笑顔を見せた。


鳳凰の暖簾をくぐるのは久しぶりだった。

店内はお客さんが2組ほど。

初めてここに来た日を思い出すな……。

まさかこんな展開になっているなんて、想像もしていなかった。

「沙羅ちゃん!元気にしてたかぁ!?」

篠原さんが厨房から駆け寄ってきてくれた。

「はい!お久しぶりです!」

すると、篠原さんは少し寂しそうな表情をした。

「やっぱり会えなくなると寂しいよなぁ……痩せたんじゃないか!?今日はいっぱい食っていきなー!」