黒い龍は小さな華を溺愛する。


カウンターの奥で、ふと視線を感じた。

顔を上げると、端の席に座っていたのは見知らぬ男だった。

ここは常連客も多いけど、新規のお客さんもたまにくる。

この前の男とも違うし、会ったことはない。

その男は何事もなかったように水を飲んでいる。

なんか……見られていた気がするけど……気のせいだよね?

そう思った、その時。

自然な動きで常盤くんが私の前に立ち、視線を遮る。

まるで、私をカウンターの外から隠すみたいに。

その背中がやけに近くて。


「常盤くん……」

「ここ、俺やるから厨房行ってきて」

「あ……ごめんね」

「謝んなくていいから」

常盤くん、私が気にしてるの気付いてる……?

この前のことがあってから、周りの視線に敏感になってしまっていた。

そんな自分が相手の思惑通りになっているようで、嫌になる。