黒い龍は小さな華を溺愛する。


鳳凰の裏口から入り、律くんはテーブルに参考書を広げた。


「苦手なのは数学。ここがわかんなくて」

「うん……あ、これね」

思ったより自然に教えられて、自分でも少し驚く。

家庭教師とか向いてるかな?

「沙羅、教え方うまいじゃん」

「常盤くんほどじゃないけど、点数は悪くないから」

「へぇ」

律くんは感心したように言って、ふと顔を上げた。

「そういえば沙羅って料理すんの?さっき見てただろ?」

「あー……普段はしないんだけどね……」

一瞬迷ってから答える。

「……常盤くんに作ってあげたくて」

律くんは一拍置いて、少しだけ視線を逸らした。

「いいな、そういうの」

「そうなの?律くんだってモテそうじゃん」

「学校に沙羅みたいな子はいないよ」

「え?」

聞き返した瞬間、リビングの扉が開いた。

「なにしてんの?」

振り向くと、常盤くんが驚いた顔して立っている。

笑っているはずなのに、視線だけが鋭い。