唇が離れたあと、常盤くんは私の額に自分の額を軽く当てた。
近すぎて、息がかかる。
「……なぁ、沙羅」
低い声。
さっきまでの軽い雰囲気とは変わり、ドキッとする。
「どうしたの……?」
「俺さ……」
一拍置いて。
「今度誰かがあんたを本気で傷つけたら、多分止まんねぇと思う」
冗談じゃない声だった。
「だから怖くなったら、ちゃんと言えよ」
「え……?」
「離れたいって思ったら、逃げろ。……俺は追いかけるけど」
……追いかけるんだ。
それがすでに怖いのに、なぜか安心してしまう自分もいて。
正直な気持ちは……。
「怖いよ、それでも常盤くんのそばにいたいって思うんだよね」
自分でも不思議なくらい、声は震えてなかった。
常盤くんは黙ったままで。
「だから、ちゃんと一緒に強くなりたい」
「……わかった。それまじで惚れる」
常盤くんが笑いながら、私を正面から抱きしめる。
強くて苦しいけど心地よい。
――幸せは壊れる時ほど静かだ。
あの夜のぬくもりが残っているほど、
現実は容赦なく近づいてくる。



