「ちょっと来い」

「え?え?」


 私の手首をぎゅっと握ったまま、彼は走り出す。


「ちょ、ちょっと!」

 なになになに?!


 訳がわからないまま、彼に引っ張られそのまま一緒になって走る。目の前に白いテープが迫って来て、私達は二人でそれを切った。


 握られた手首がやけに熱く感じる。走ったせいなのか、動機もひどい。


「な、なんなの…?」


 乱れた息を整えていると、


「条件クリア、白に二十点、と」

と係りの生徒が記録する声が聞こえて顔を上げた。そこでようやく気が付いた。あ、これ借り物競争?


「私、借り物競争の条件に合ったってこと?」

 いつの間にか握られていた手首は離され、藤宮くんは汗をぬぐっていた。

 藤宮くん、競技参加してたんだ。それはそうか。それにしても、借り物の内容が私に関するものだったってことだよね?一体借り物の指示にはなんと書かれていたのだろうか?


「ねぇ、藤宮くん、紙になんて書かれてたの?」

 そう問いかけると彼は、持っていた借り物の指示の紙をくしゃっと丸め、ジャージのポケットに突っ込んでしまった。