高層マンションのロータリーに車が停まる。 紗奈は戸惑いながらも、前島にお礼を告げて車を降りる。 「ありがとう。荷物だけお願いします。」 要はそう前島に言って、所在なさげに佇む紗奈を軽々抱き上げて歩き出す。 「ひゃっ!!」と紗奈はびっくりして思わず要に抱きついてしまう。 「あ、あの、先生、大丈夫です!あ、歩けますから。」 慌てて降りようとする。 「ダメ。逃げられると困るから、抱きついてて。」 困って前島に視線を向けて助けを求めるが、ただ紗奈に微笑みを返すだけだった。