「前島さん、コンビニかドラックストアに寄って。」
要は運転手に伝える。
「承知しました。」
前島はドラックストアを見つけ駐車場に入る。
「俺が買って来るので、彼女の事をお願いします。」
要は勢いよく車から出て行ってしまった。
前島は運転席から降りて、後部座席のドアを開け外からしゃがみ混んで紗奈の傷口を見る。
「靴下が汚れてしまいます。脱いだ方がよろしいかと。」
ツーっと溢れた血がつたって下の方まで来ていた。
紗奈は慌てて靴下を下ろす。
前島はテッシュを取り出し、つたった血を優しく拭く。
「要様があれほど慌てているのを初めて見ました。」
前島がポツリと言って紗奈に微笑む。
「先生は授業でもいつも冷静です。」
「よっぽどあなたの事が大切なんだとお見受けします。」
えっ、と紗奈は驚く。
「手のかかる生徒だと思われているんです。きっと…。」
紗奈は要は入って行ったドラックストアの入口を見つめながら言う。
「それ以上かと、
要様は学生時代から女性には特に警戒されます。ストーカー行為をされた事があるんです。」
「そうなんですか⁉︎」
びっくりして前島を見る。
「どうか、要様の事よろしくお願いします。」
前島に頭を下げられて慌てる。
「いえ、私はそう言うんじゃ無いんです。…多分、危なっかしくて心配させちゃうんだと思います。」
「きっと、これから分かられると思います。」前島は、意味深な顔をして紗奈に頷く。
要は小走りで戻ってきて、前島は立ち上がる。
「どう?」
「転んだ拍子に鋭利な物にぶつかって切れたようです。アザも出来ているので冷やした方が良さそうです。」
「要様は手当を、私は冷やす物を買ってきます。」
「分かった。」
要はスーツが汚れるのも気にせず、しゃがみ込み紗奈の足を軽く上げ傷口を消毒する。
紗奈は恥ずかしくて、慣れなくて、触れられるだけでドキドキしてしまう。
「少し染みるよ。」
ヒヤッとしてびくっと身体が揺れてしまう。
要が心配して手を止め紗奈を見上げる。
「だ、大丈夫です。」
要は傷口の手当てを再開して、器用に絆創膏を貼ってくれた。
「跡が残らないといいけど。」
要は何気なく靴下まで上げて、傷口にキスをした。
ドキンと心臓が跳ねて紗奈は瞬きを繰り返す。
今までもドキンとさせられる事はあったけど、要が、こんなにも真っ直ぐ視線を向けて来る事は無かった。
紗奈は戸惑い目線が泳ぐ。
そのタイミングで前島が戻って来て保冷剤をハンカチに巻いて要に渡す。
「しばらく冷やして下さい。いくらかアザになるのが押さえられるかもしれないので。」
「ありがとうございます。」紗奈は受け取り患部に当てがう。
「では、参りましょうか?」
「そうだな。」やっと要は立ち上がり車に乗り込む。
「後、10分程で到着しますので。」
前島は2人に声をかけて車を発車させる。



