「私、お酒とか飲めないんですけど…大丈夫でしょうか?
それに男性とお付き合いした事も無くて…」
不安になって下を向く。

「思った以上にピュアなのね。
でも、大丈夫だよ。大抵は座ってニコニコしてればいいから、キャバクラみたいに一対一の接待はまず無いしね。」
芽衣がウィンクして教えてくれる。

「お待たせー。」
奥の方から着物姿の女性が現れこちらに向かってやって来る。

「初めまして。中山です。」
紗奈は立ち上がって挨拶する。

「あら、可愛い子。
 
ようこそ。ラウンジ更紗へ。ちなみに更紗は私の本名なの。内緒よ。」
こう言う人が色っぽいと言うんだろうなと、紗奈は思いながらオーナーを見る。

「ここのオーナーの小百合です。
よろしくね。」
ニコリと笑って紗奈を見る。

「こう言うお仕事初めましてなんだってね。
以前は何かバイトしてた?」

「えっと、コンビニバイトとお弁当屋さんのバイトを少ししてました。」

「そっかぁ。それだったらこの仕事の方が断然楽で楽しいと思うわよ。」

「彼女、かなりのピュアっ子で、男性とお付き合いした事がないみたいなんです。
最初はヘルプから入った方が良いと思います。」
芽衣がフォローしてくれる。

「そうなんだ。
綺麗な顔してるからモテそうなのに。」

「彼女、先週くらいに地方から上京したばかりで、初めまして会った時はびっくりする程田舎っ子だったんですよ。
黒縁メガネで、三つ編みしてて、
私が友達と大学デビューさせたんです。」
そう、自慢げに話す。

「そう。じゃあ。夜バイトもデビューね。
いつからこれそう?」

「えっ!!
今のでもう決まったんですか⁉︎」
紗奈は余りの速さでびっくりする。
履歴書だってまだ提出してないのに…。

「うちは、見た目と愛嬌が全てなの。
あなたは見た目でまず合格。
まぁ。まず豊が久々に太鼓判を押したから、そこでほぼ決定だったけどね。」

「そうなんですね…。
どうぞよろしくお願いします。
私、お酒とか飲めないんですけど大丈夫ですか?」

「もちろん大丈夫。
お酒は提供するけど、うちはノルマも無いしフリードリンクやノンアルコールもあるし、お食事だって食べれるの。あんまり硬くならなくて大丈夫だからね。」

「はい。頑張ります。
あの…後、今住んでる家が遠くて終電が11時45分なんです。それでも大丈夫ですか?」