その様子を要はしばらく静かに見守りながら、1人思案する。

紗奈はいつも要の事になると意固地なほど頑固になる。
そんなに自分の事を気に留めてくれるのかと、感動すら覚える。

どうすれば喜んでもらえる?
俺の書き殴った様なラフスケッチすら大事にしたいと思ってくれる。

そうだ!っと閃いて書庫の奥に一冊のファイルを探しに行く。

「中山さん。ちょっといいですか?」

作業を黙々と進める紗奈に優しく声をかける。

「…はい」
振り向かず紗奈は答える。

紗奈は、やっと背伸びして届く高さの棚にある本に手を伸ばしている。

その本を取り出すのを手助けしようと、要も手を伸ばし、
紗奈の手と一緒に本を優しく掴む。

紗奈はビクッと体を震わせて要を見上げる。
思っていたより近くて驚く。

紗奈の心臓が訳も分からず高鳴る。