先生は優し過ぎると紗奈は思う。

1人1人の生徒にこんなに時間を割いていたら、大変じゃないかと勝手に心配する。


コンコン。

「お疲れ様、要くん。
夕飯食べに行かない?」

軽い感じでドアから声がして顔だけ出す人がいる。

「白石先生…、ちょっと待ってて下さい。」
要が返事をする。

「あれ?
珍しく女子生徒がいる。こんばんは。進路相談?」

白石先生って担任の?

「いえ。ゼミの説明です。
彼女ガイダンスに参加出来なかったので、先生のクラスの生徒ですよ。」

紗奈は急いで立ち上がり、頭を下げる。

「短大から編入の中山紗奈です。
よろしくお願いします。」

「ああ。昨日休んでた子だね。
よろしく。北原ゼミに女子なんて珍しいね。」

そんなに女子率低いの?
私、やっていけるんだろうか?ちょっと心配になる。

「白石先生、彼女が不安になるでしょ。やめてください。」
要が咎める。

「むさ苦しいのは本当の事でしょ。
まぁ。もし、ダメだったら僕のゼミおいで。」
白石はニコッと微笑んで紗奈の頭を優しくトントンする。

どう反応すべきか分からず固まってしまう。

「白石先生、セクハラで訴えられますよ。
気をつけて下さい。」
要は思わず睨みつける。

「あ、あの。

お話しはよく分かりましたので、
私帰ります。ありがとうございました。」
 

「ちょっと待って。

中山さん。1人で大丈夫ですか?
駅まで送りましょうか。」
要も慌て立ち上がり、紗奈に近づく。

「大丈夫です。先生お忙しいところ、
お時間ありがとうございました。」
軽くお辞儀をして紗奈は足速に去って行った。

「珍しいね。
要君が女子に優しいの。」