「あんた達やめときなよ。
嫌がってるの分からないの?」

いきなりショートカットの爽やか女子が振り返ってチャラい2人から紗奈を逃してくれる。
「こっちおいで。コイツら気にしなくていいから。ホント勉強の邪魔。」
怖い顔で睨むボーイッシュな女子に紗奈は感謝する。

「ありがとうございます。」
すかさず前の彼女の隣に座り直し、お礼を言う。

「私、佐野晶。よろしく。」

握手を求められ、おもむろに握り返す。

「中山紗奈です。よろしくお願いします。」
ふわっと笑いかける紗奈に、彼女を見ていた全員が固まる。

美少女が来たと教室がざわめく。

当の本人はまったく気付かず、女子の隣に座れた事に安堵していた。

そう。紗奈は人目を引くほどの美少女だった。

今までずっとメガネだったし、
女子校だったしで、特に注目を集める事なくひっそりと咲く花の様に目立たず生きて来たけれど、
本人はまったく気付かず大学デビューを果たしたのだった。

「佐野さん。私、初日のガイダンス受けてなくて、教室の場所とか良く分からないんです。移動の時一緒について行っていいですか?」

「もちろんだよ。
私、海外の学校から編入して来て知り合いまったくいないから、仲良くしてね。」

「えっ。留学してたんですか!カッコいい。すごいですね。」
紗奈は驚き目を丸くする。

「敬語辞めて、同級なんだから普通でいいよ。」

「あっ。私、一年休学してて実は1年年上なの。」
小声でいう。
「そうなんだ。でも気にする事ないよ。
留年して大学入ってる人も多いし、紗奈は年上って感じしないし。」

「良かったぁ。」紗奈は心からそう言って
晶と仲良くなりたいと思った。