『大丈夫。
紗奈が気に止む事はないから
ちゃんと寝て、ちゃんと食べて、
明後日には出来るだけ早く帰るよ。』

「ありがとうございます。 
要さんの声を聞いたら安心しちゃって、ちょっと気持ちが緩んだだけです。
心配しないで下さいね。」

『心配するよ。
紗奈は俺の全てだから、ちゃんと自覚持って。』
突然の愛の告白にドキンと心臓が跳ねて、堪えていた涙も止まる。

「突然、な、何を言うんですか。」
耳まで真っ赤になりながら紗奈は言う。

『あはは。紗奈には俺の事だけ考えて欲しいから。』

面白そうに笑われて紗奈は頬っぺたを膨らませて抗議する。
「そうやって揶揄わないで下さい。どう答えていいか困るじゃないですか!」

『揶揄ってなんかないよ。
可愛いなぁと思っただけ。』
その後は終始、要と楽しい話しをして紗奈の心も癒され、落ち着きを取り戻した。

「ありがとうございます。今夜はぐっすり寝れそうです。」

『それは良かった。
じゃあ、ちゃんとお風呂に浸かってから早く寝ろよ。』
今夜は1人だから、シャワーで済ませようとしていた事さえ、要に見透かされてしまった。
「なんで、私が考えてる事すぐ分かっちゃうんですか?」

『それだけ紗奈の事をよく見てるって事だよ。』
学校で教壇に立つ人とは思えないくらい甘い
セリフばかり吐く。

「私も要さんの考えてる事、全部分かったらいいのに。」

『俺は顔に出ないから分かりにくいって親にも言われるし、紗奈でも難しいよ。
紗奈は素直だから、すぐ顔に出るし声だけでも分かりやすい。』

「なんだか悔しいです。」
紗奈がそう言うと、要は嬉しそうに笑って『頑張って俺の事分かるようになりなよ。』と言う。

そんな風に淡いもない会話をして、心が満たされ程良く眠くなってきた頃、『おやすみ』
を告げて電話を切る。

たまには電話もいいなぁと紗奈は思う。
普段よりいっぱい話せた気がする。気付けば既に1時間が経っていた。

紗奈はその満たされた気持ちのままお風呂に入り、ベットに横になればすぐに眠つく事が出来た。