ビリングに通されて、目の前の夜景に息を呑む。昨日よりも気持ちが落ち着いたせいか感動がより胸をときめかせる。
紗奈の手を引く先生までもまるで額縁に入った一枚の絵の様だと思う。

昨日思いがけず一泊したけど、まさかまたここに戻ってくるとは思っていなかったから、まだ夢見心地でふわふわして地に足がついてないみたいだ。

「何度見ても綺麗な夜景ですね。」
景色に引き込まれる様に紗奈は窓際に向かう。まだ、手を離さない要も一緒に着いていく。

「これから毎日堪能出来るよ。」
言いながらフワッと背後から抱きしめられる。心臓がドキンと跳ねて現実味を帯びてくる。

「この景色も紗奈のものだよ。
俺の事は徐々に受け入れてくれればいいから。」

「…この景色が…私のもの?…贅沢ですね…。」
紗奈は俯いて考え込む。
こんな高層マンションの最上階に住める先生は本当は何者なのか分からない。私が先生に相応しいとは思わないし、釣り合わないのも重々分かっているつもり。

でも、先生の側はドキドキして緊張もするけど、心地良くて安心する。ずっとこうしていたいと願ってしまう。