「どうしたの?」
なんて、聞いても酔っぱらって上機嫌になっているだけだろう。
お兄ちゃんはお酒を飲むといつも以上によく笑うし。
そう思っていると巧くんはゆっくり話し始めた。
「いや、奈子が心配してくれるの嬉しいな〜って」
「えっ?」
「事故に遭ったとき、身体は痛いし、父さんと母さんは泣いてるし、皆と卒業できないし。それから、サッカーも。……本当、辛かった」
初めて聞く巧くんの本音。
巧くんは事故に遭ってから一度も私に弱音を吐かなかった。
いつも笑ってた。
だけど、そこに不安がなかったわけじゃない。
「……なんて顔してんだよ」
「だって、」
私はやっぱりあの時の事故を自分とは無関係だと思えないから。
「でも、俺さもっと辛いことがあったんだ」
「な、何?」



